見合い旅行
北海水産に働く谷川圭吉は、銀座へ出ようとして停めた自動車のことから、ある女性と同車する羽目になった。銀座で降りた二人はそのまま別れたが、圭吉の胸には名も知らぬその女性が深く刻み込まれた。北海水産の社長は圭吉の亡父の旧友で、母一人子一人の圭吉に何かと面倒を見ている。ある日、社長は圭吉に見合いをすすめた。これはかねて圭吉に仄かな想いを寄せている社長の娘百合子の作戦で、圭吉が欠席したことから行き悩みの形となったが、相手の女性は今田登喜といい、彼女こそ圭吉が自動車で知り合った女性であった。社長の再三のすすめに圭吉は北海道へ出かけ、今田家を訪ねるが、肝腎の登喜が風邪気味なので、見合いは明日に延期された。その日、番頭万平の娘で町の不良と駈落ちしていた芳子も今田家へ帰って来た。家人のもてなしで寝床に入った圭吉は夜更けて女の声に夢を破られた。実は私には親にもかくした...